ESSAY

過去の日々(2025.9.01)

生活に移動が多い人には、丁寧な暮らしをする上でいくつかの制限がある。

ペットはもちろん飼えないし、大型家具や家電も買えない。こだわりの食器も揃えられない。

移動を前提とした暮らしのお供には、持ち運びのしやすさが求められる。

機能性、コンパクトさ、頑丈さがモノ選びの基準になり、その結果、小さなプラスチック製品が身の回りにあふれる。

場所に縛られない自由な生活をする代償だと思う。

長期間不在になるどころか、そもそも家を転々とするのだから、言葉通りそこに根を張る植物を育てることなんてもってのほかである。

もってのほかだったのである。これまでは。

思えば、今回の帰省で実家からお気に入りの鉢植えを持ってきたのは、まだ知らぬ土地で、少なくとも2年間は住み、そこで這いつくばっても大学院を修了するという決意の表れだったのかもしれない。

はじめてこの街に来てから3回目の日曜日。家の近くの公園で毎週開催されているらしいマーケットを訪れ、ふと目に留まった小さなタイバジルを買った。

さっそく、昨日届いたばかりのテーブルに鉢植えを置き、タイバジルを植えてみた。

ここでしばらく生きていくと、小さな覚悟が芽を出した。

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